購買心理とは、人が物を購買するまでの「心の流れ」のこと。
顧客の購買心理を理解することは、営業マンが成果を上げる際に非常に効果的だと言われます。
なぜなら、顧客の購買心理が解れば、短期間の間で、顧客との信頼関係を築き、販売に繋げることが可能になるからです。
しかし、一般的な購買心理では、営業マンが売れるようにはなれません。
そこには、営業マンが知るべき購買心理の法則とプロセスが存在するからです。
顧客の購買心理を知れば、売れるようになるの? もっと顧客に信頼される営業になりたい!
こんな疑問や悩みを解決します!
本記事で紹介する内容
- 営業が理解すべき顧客の購買心理とは
- 営業が知るべき顧客の購買心理の法則
- 顧客心理に沿った営業プロセスとは
営業マンに必要な顧客の購買心理を知り、顧客との信頼関係を深める営業力を身につけたいという営業マンの方は、この記事を読み進めてみてください。
今回は「顧客の購買心理とは?営業が知るべき法則とプロセス」と題してお送りします。
営業が理解すべき顧客の購買心理とは
購買心理とは、消費者が物を購入する際に、無意識に行う心理的なプロセスを指します。
有名な購買心理の法則に、AIDMA(アイドマ)の法則などがあります。
古くから、マーケティング施策を考える際のフレームワークとして使われており、マーケティングの基本や解説本には必ず登場するほど、有名な法則です。
恐らく、すでに知っているという営業マンも多いのではないでしょうか?
ですが、営業マンの場合、理解すべき顧客の購買心理は違ってきます。
その理由や違いについて、具体的に解説していきます。
一般的な購買心理が営業マンに合わない理由
顧客の購買心理を表すプロセスとして、前述したAIDMAの法則などが有名です。
AIDMAの法則は、消費者の購買心理を5段階のプロセスに分けて考えます。
- Attention(注目):商品に注目する=商品を知ってもらう
- Interest(興味):商品に興味を持つ=商品に興味を持たせる
- Desire(欲求):商品が欲しい=商品の魅力を伝える
- Memory(記憶):商品を覚える=継続的にPRする
- Action(行動):商品を購入=購入してもらう
その他に、AIDMAの法則から発展したAISAS(アイサス)やAISCEAS(アイセアス)、AIDCAS(アイドカス)などがあります。
どの法則も消費者が商品を購買するまでに至る心理プロセスを複数の段階に分けて考えます。
そして、段階に合った販売アクションを実施することで、購買心理を次のステップに動かし、購入まで持っていく営業手法です。
この手法は、来客型の店舗販売やネットショップ、Webマーケティングなどでは、とても有効な手法になります。
ですが、訪問提案型の営業マンが対応する顧客の購買心理には、多くの場合、当てはまりません。
なぜなら、商品軸で考えた顧客の購買心理だからです。
そして、営業マンが訪問する顧客の多くが、「商品を求めていない」からです。
営業マンが訪問先で、必死に商品説明をしても、まったく売れない理由でもあります。
では、訪問提案型の営業マンの場合、顧客の購買心理はどう考えるべきか、紹介します。
顧客の購買心理は顧客軸で考える
営業マンが理解するべき顧客の購買心理は、顧客軸で考える必要があります。
なぜなら、営業マンが訪問する顧客のほとんどが、商品を求めていないからです。
そのため、営業マンが商品軸で顧客の購買心理を考えても、かみ合わない可能性が高くなります。
とはいえ、商品を購入する際、顧客には必ず購買心理は働きます。
ですので、営業マンの場合は、顧客の購買心理を、顧客軸で考える必要があるんです。
営業マン理解するべき顧客の購買心理は、以下のように考えることができます。
- 無関心:商品以前に、営業マンにも興味がない
- 不安・不満:不安や不満を感じている
- 欲求・関心:不安や不満をなくしたい
- 解決策:解決策を知りたい
- 決断・購入:解決できる方法(商品やサービス)を決断
- 信頼・紹介:信頼できる営業マンを知人にも紹介
営業マンの仕事は、販売員とは違います。
商品軸で考えた、商品説明では、顧客の心を掴むことはできません。
営業マンの仕事は、顧客軸で考えた、購買に至るまでの顧客心理を理解することが重要なんです。
次からは、購買に至るまでの顧客の心理について、具体的に解説していきます。
営業が知るべき顧客の購買心理の法則
営業マンが新規訪問から、商品やサービスの購入に至るまでに、顧客の購買心理(心境の変化)は以下のような図で表せます。
新規開拓なのか、既存顧客なのか、取り扱う商品やサービスによっても、スタート地点に若干の違いはあるかも知れません。
ですが、営業マンが対応する顧客の購買心理は、「無関心」「不安・不満」「欲求・関心」「解決策」「決断・購入」「信頼・紹介」の6つのステップで表現できます。
そして、6つの心境の変化は、どんな商品やサービスであろうと、変わることはありません。
ですので、顧客が営業マンから、物を購入する際の心境の変化は、不変の原則と言えます。
次から、6つのステップごとに、営業マンが知っておくべき、顧客の心境と変化の法則を解説していきます。
ステップ1:無関心
新規開拓などの飛び込み訪問の場合、顧客の心境は「無関心」から始まります。
この段階では、どんなに良い商品やサービスを紹介しても、見込みになることは、ほぼありません。
はじめまして、株式会社○○の△△と申します。 本日は、このような商品の紹介でまいりました。(チラシを出す)
今、忙しいので結構です。 特に困っていません。
こんな感じになりますよね。
これは、顧客の心理状態が無関心の状態だからです。
無関心と言っても、商品に対してではなく、訪問してきた営業マン自身に興味がない状態だということです。
普通、いきなり営業マンが訪問してきたら、「話をきいてみよう」と興味を持つ顧客はいないでしょう。
むしろ、顧客の頭の中では、「誰だろう」とか「どうやって断ろう」といった警戒心の方が強くなります。
ですので、顧客の心理状態が無関心の段階では、営業マンは「警戒心をとく」必要があります。
ステップ2:不安や不満
顧客の心理状態が、無関心でなくなれば、営業マンの話に耳を傾けてくれるようになります。
ですが、商品やサービスに興味はありません。
顧客が商品やサービスを購入しようと思うときには、必ず裏側に何かしらの不安や不満が存在するからです。
不安や不満を感じていない段階では、商品やサービスは必要ありません。
こちらの商品、使うとこんなに便利なんですが、お客様もどうでしょうか?
あれば便利かもしれないけど、特に困ってないので…
こんな感じになります。
場合によっては、せっかく警戒心がとけた顧客も、「この営業は商品を売りたいだけなんだ」と無関心な状態に戻る可能性すらあります。
ですので、ステップ2の段階であれば、営業マンは「顧客が抱える不安や不満を引き出す」必要があります。
ステップ3:欲求や関心
顧客が、何かに不安や不満を抱えている場合、その悩みを無くしたいと思うでしょう。
悩みが無くなれば、そこで抱えているストレスがなくなります。
この段階までくると、顧客の心理は悩みを無くすための欲求や関心に変わります。
ですが、商品やサービスに興味があるとは限りません。
その悩みなら、こちらの商品を購入すれば解決できますよ!
たしかに、解決できそうだけど、お金もかかるし…。 他にもっといい商品があるかも…
顧客の欲求や関心が非常に高まっていれば、商品やサービスを購入してくれる可能性はあります。
ですが、欲求や関心が高まっていない状態で、商品やサービスを提案すると、「我慢」や「比較」といった心理が働いてしまいます。
ですので、営業マンは、顧客の悩みが無くなる状態、理想の未来を想像させて、欲求や関心を高める必要があります。
ステップ4:解決策
顧客の購買心理が、悩みを解決したいという欲求や関心が最高潮になると、次に解決策を知りたくなります。
顧客が解決策を知りたいと思ったときが、営業マンが悩みを解決できる商品やサービスを提案するタイミングです。
解決策を知りたい顧客にとって、営業マンからの提案は、もはや売り込みでは無くなっています。
あとは、本当に商品やサービスを利用することで、顧客の悩みが解決できるのかが、大切になってきます。
顧客が抱える不安や不満、悩みに合わせて、商品やサービスの特徴を提案していきましょう。
ステップ5:決断・購入
顧客の購買心理状態が、決断・購入のステップまでくれば、営業の仕事はそっと背中を押してあげること。
ステップ1からステップ4までを、順調に進んできていれば、顧客の方から「お願いします」と言ってくれる可能性が高まります。
ですが、顧客は商品やサービスの購入を決断する際、迷いや検討する心理が働きます。
顧客の心理状態を良く観察して、購入の後押しをしてあげる必要があります。
ここで営業マンに大切なのは、あせらないマインドコントロールです。
ステップ6:信頼・紹介
営業の仕事は、顧客に商品やサービスを販売することではなく、顧客の不安や不満を聞きだし、悩みを共有し、解決することです。
これは決して、営業の理想の姿といったものではありません。
顧客の気持ちに寄り添うことで、あなたへの信頼が必ず生まれます。
顧客からの信頼を得る事ができれば、友人や知人などを紹介してもらうことも可能になります。
知人や友人を紹介してもらうことは、その相手との関係が、無関心をクリアできている状態からスタートできるということになります。
顧客の購買心理には、売れる営業マンの法則が隠れている
ここまで、営業マンが知るべき顧客の購買心理を、6つのステップで紹介してきました。
6つのステップの中には、売れる営業マンになるための法則が隠れています。
- 新規開拓では、顧客は、商品に無関心ではなく、営業マンに関心がない
- 顧客は不安や不満などの悩みを解決したいとき、商品やサービスを購入する
- 顧客が営業マンに求めるのは、商品説明ではなく、問題の解決方法
- 顧客の問題や課題に寄り添い、解決することで信頼関係が生まれる
- 顧客からの紹介は、無関心のステップをクリアしてスタートできる
これらの法則を理解して、顧客の心理に寄り添う営業マンが、トップセールスと呼ばれる営業マンなんです。
顧客心理に沿った営業プロセスとは
顧客の購買心理を理解した上で、売れる営業マンになるためには、顧客の購買心理に沿った営業プロセスを実行する必要があります。
なぜなら、いくら顧客の購買心理を理解したとしても、営業プロセスがともなっていなければ、結果は変わらないからです。
顧客の購買心理に沿った、営業プロセスを考える際、とても有効な2つのポイントがあります。
2つのポイントは以下です。
- ステップごとに複数のチェックポイントを設定する
- 次のステップに移行するターニングポイントを決める
2つのポイントを組み込んだ営業プロセスを構成することで、「今は何をする段階か」「次に何をすればいいのか」が明確にすることができます。
ここからは、ステップごとに具体的なチェックポイントやターニングポイントの考え方を紹介していきます。
無関心の段階での営業プロセス
新規開拓や飛び込み営業の場合、顧客の心理状態は、「無関心」です。
顧客は、営業マンにも商品にも興味を持っていない状態です。
むしろ、警戒している状態ですから、まずは警戒心を和らげなくてはなりません。
そのため、警戒心が和らいでいるかのチェックポイントを複数決めておきます。
例えば、以下のような感じです。
- 名刺交換してもらえた
- 会話時に笑顔が見えた
- 情報提供に耳を傾けてくれた
- 名前で呼んでくれた
このような複数のチェックポイントを設定し、どれだけチェックできたかによって、警戒心の和らぎ度合いが確認できます。
もし、名前で呼んでもらえてないのなら、名前で呼んでもらえるようなアクションを考え、チェックポイントをクリアしていきます。
また、ターニングポイントを設定しておくことで、次のステップに移行できるかの判断ができます。
例えば、以下のような感じです。
- 会話の中で、顧客自身の考えや思いを話してくれた
- 情報提供に対して、質問や疑問を話してくれた
顧客が、自身の考えや思い、質問や疑問をするということは、警戒心が和んでいる証拠です。
このように、決めていたターニングポイントをクリアできたら、次のステップに進むようにしましょう。
※警戒心を解く方法
不安・不満の段階での営業プロセス
顧客との会話が成立していると、話題の中から不安や不満のような意見を聞けることがあります。
顧客が持つ、不安や不満には何かしらの原因が存在しています。
顧客の持つ、不安や不満を深堀するためのチェックポイントを決めておきます。
チェックポイントを考える際のポイントは、何が不安で何が不満なのかを深堀することです。
例えば、以下のような感じです。
- その分野に詳しくない(不安)
- 同じ環境の人はどうしているのか(不安)
- 過去に嫌な思いをした(不満)
- 自分の考えが他とは違う(不満)
- 現状で苦労している(不満)
このようなチェックポイントを深堀することで、顧客が抱いている不安や不満を更に具体的にすることができます。
顧客が「なぜ不安になっているのか」や「なぜ不満を持っているのか」に耳を傾けてあげることを意識すると効果的です。
そして、ターニングポイントも決めておきます。
例えば、以下のような感じです。
- どうすればいいのか相談された
- 理想を聞くことができた
複数のチェックポイントをクリアしながら、ターニングポイントへ導いていくことで、顧客の本音を聞き出すことができます。
欲求・関心の段階での営業プロセス
顧客から聞き出せた不安や不満の裏には、何かしらの欲求や期待が隠れています。
「こうなったらいいのに」とか「なんでこうならないのか」といった顧客の心理を確認します。
ここでも、複数のチェックポイントを考えておきます。
例えば、以下のような感じです。
- どうしたいのか
- どうなりたいのか
- 理想と現実のギャップは何か
どうすれば、不安や不満を無くすことができるのかを、深堀することがポイントです。
深堀する中で、顧客も気付いていなかった、潜在的な問題点を発見できることもあります。
更に不安や不満を解消できた場合、どんな理想的な未来になるのかを、一緒にイメージすることが重要です。
ここまでくると、ターニングポイントは、限られてきます。
- 解決策を知りたいと感じている
顧客が解決方法を求めている心理状態であれば、商品やサービスの紹介は、売り込みではなく、解決策に変わります。
解決策の段階での営業プロセス
顧客が解決策を求めている段階であれば、悩みを解決できる商品やサービスを提案することができます。
解決策でのチェックポイントも決めておきます。
- 商品やサービスの特徴が解決策になっているか
- 解決策に顧客の同意が得られているか
- 費用対効果に問題がないか
他にも自身が取り扱う商品やサービスによって、考えられるチェックポイントを洗い出しておきます。
注意点は、顧客の同意がないまま、強引な解決策になっていないかどうかです。
顧客の同意が得られていれば、あとはクロージングを行うだけです。
ターニングポイントは以下のようなことが考えられます。
- 解決策をまとめた提案資料の要求
- 導入するにあたっての見積提示の要求
顧客が提案資料や見積を要求する状態であれば、本格的に商品やサービスを検討しようという意思の表れになります。
決断・購入の段階での営業プロセス
決断・購入の段階だからといって油断は禁物です。
ここでもチェックポイントを考えておきます。
- 金額面に納得しているか
- 商品やサービスの内容に疑問点がないか
- 決断に障害となる要素がないか
複数のチェックポイントをクリアすることで、顧客の心理状態は安心や信頼に変わっていきます。
あとは、背中を押してあげるだけで、顧客自身から「購入したい」と言ってもらう事ができます。
紹介の段階での営業プロセス
営業の仕事は購入してもらって、終わりではありません。
せっかく、信頼を得て購入に至ったのであれば、更に顧客の輪を拡げていきましょう。
顧客から、知人や友人を紹介してもらうことで、営業マンにとって一番労力のかかる、序盤のプロセスを一気に飛び越えることができるからです。
紹介の段階でのチェックポイントは以下のような感じです。
- 導入後に解決策の効果がでているか
- 理想の未来に障害が発生していないか
- 商品やサービスではなく、営業マン自身に感謝してもらえているか
このようなチェックポイントを確認し、アフターフォローをすることが重要です。
営業マン自身が、信頼や感謝されている状態であれば、顧客も知人や友人に紹介しても大丈夫と思えるからです。
顧客が知人や友人を紹介しようと思う心理は、商品やサービスが優れているからではなく、営業マンとの信頼関係があることで、初めて発生するんです。
まとめ
顧客が商品を購入しようと考えるとき、そこには必ず購買心理が存在します。
営業マンが顧客の購買心理を考える際には、商品軸ではなく、顧客軸で考える必要があります。
顧客の購買心理を考える際には、自身が顧客側の立場で考えることが有効です。
例えば、いきなり訪問してきた営業マンの話を聞きたい人は少ないでしょう。
でも、同じ趣味があったり、丁寧な対応だったり、様々な要素があって、初めて話を聞いてみようと思うはずです。
また、興味のない商品やサービスを熱弁されても、購入しようとは思いませんよね?
たとえ商品やサービスに興味があっても、自分が知りたい特徴や困りごととは違うポイントを、必死に紹介されたら、どうでもいいと思うはずです。
そのため、顧客の購買心理を理解し、心理状態に沿った営業プロセスをふむことが、とても重要なんです。
- 現在の顧客の心理状態は、どのステップなのか
- ステップで考えられるチェックポイントをクリアできているか
- 次のステップへ進むためのターニングポイントに到達できているか
顧客の購買心理を顧客軸で考えていくことで、最終的に、顧客と営業マンの間に信頼関係が生まれます。
顧客との信頼関係が構築できれば、次の商品やサービスの購入、知人友人の紹介など、営業マンにとってのメリットが拡がっていきますよ。
今回は、「顧客の購買心理とは?営業が知るべき法則とプロセス」と題してお送りしました。
ちなみに、営業マンが成功するためには「顧客の購買心理」の他に、もう1つ重要なポイントがあります。
以下の記事で紹介していますので、興味のある方は、読んでみてください。